北限のニホンザル−極寒に生きる

 ニホンザルは、文明活動を営むヒトを除くと最も高緯度で生活する霊長類として有名だ。国内でも北限に生息する下北半島のニホンザルは、1970年に国の天然記念物に指定されている。それ以降、国の保護政策の効果によって個体数が予想以上に増加し、一部は農作物を荒らし始めるに至った。本来、天然記念物として捕獲等は禁止されているが、個体数を調節するためにやむなく捕獲されたニホンザルは、現在むつ市脇野沢の野猿公苑で飼育されている。
 野猿公苑周辺には、群れに属さない野生の離れザルも生息しており、今回、ちょうど野猿公苑で撮影中に姿を現した。こうした離れザルはヒトに危害を与える可能性があるとして、過去に国の許可の下で捕獲され薬殺処分されたとのことだ。青森県内では白神山地や津軽半島で生息するニホンザルだが、天然記念物に指定された下北のニホンザルだけで、こうしたヒトとのなわばり争いが展開されているのだ。保護すれば個体数が増大し、放置すれば生息地を失った野生生物はやがて絶滅するだろう。野生生物と人間の共存という夢の実現のためには、人間の生産活動を犠牲にするしか選択肢はないのだろうか。

鯛島

<< 1 >>

撮影地:青森県むつ市脇野沢・野猿公苑
撮影日:2007年2月11日
撮影機材:NIKON D200, 70-300mm